危機広報の観点から見る「アイドルマスター2騒動」をめぐるバンダイナムコゲームスの対応の考察 〜日本コロムビアの対応と比較して〜(1/4)
※2011年8月21日にツイートしましたビデオゲーム「アイドルマスター2」を巡る騒動(以下2騒動)とバンダイナムコ(以下バンナム)に関しての記事を加筆修正したものです。
記事内のデータ等は、ツイート当時のものとなっております
当騒動の概説を以下にまとめておりますので、本記事をお読みになる際はご参考ください
◎「アイドルマスター2」騒動概説
http://mayayajujitsu.blog108.fc2.com/blog-entry-265.html
◎0:はじめに
●0-1:続く「ユーザーが抱く不信感」
2月24日に発売された、XBox360版アイドルマスター2。売り上げをみますと、初週:メディアクリエイト調べで34621本(http://www.4gamer.net/games/117/G011794/20110302065/)ファミ通調べで4万0422本(http://geimin.net/da/db/2011_ne_fa/mo.php?sort=ruikei2+11)
また、ファミ通調べでは、6/26現在で通算売上5万4600本(http://ameblo.jp/gameryou/entry-10953424920.html)
今年発売のXBOX360ソフトの中では最も多い売上です。しかし、廉価版含めて9万本売り上げた(このサイトによれば2009年2月現在で9.9万本。http://ameblo.jp/sinobi/entry-10208590757.html)
2007年01月:Xbox360「アイドルマスター」4.9万本
2007年11月:Xbox360「廉価版・アイドルマスター」5万本
2008年02月:Xbox360「アイドルマスター ライブフォーユー!」7.5万本)
前作1と比較すると、十分に売り上げたとはいえない結果です
また、2との連動アルバムCD「MASTER ARTIST 2」の売上も、平均7000枚台を推移しています(http://imasnews765.blog9.fc2.com/blog-entry-356.html。オリコンランキング情報サービス「you大樹」からのデータのようです。参考:http://d.hatena.ne.jp/kasuyarou/20101214/1292340426)
これは(ベストアルバム等を除いて)最大の売上を出したシリーズ「MASTER SPECIAL」の平均12000枚台を大きく下回り、2009年に発売された外伝シリーズ「DREAM SYMPHONY」の平均9000枚台も下回る売上枚数です
私は2未プレイなので、シナリオやゲームシステム、キャラクター設定等の評論はここでは行いません。しかし、上記売上だけで見る限り、2展開は成功しているとはいいがたい状況です
3月のツイートで私は「2騒動の本質は、ユーザーがバンナムに抱いた不信感」と書きました。現在の2展開の不信は、バンナムが今でもこの「ユーザーの不信感」を解消できていないことが大きな原因と考えています。そしてそれがCDやアニメをはじめとした関連企業の足も引っ張っている状況。
なぜバンナムはユーザーの不信感を解消できなかったのか?不信感を解消るためにはどうすればいいのか?
今回はリスクマネジメントと「危機広報」の面から、2騒動をめぐるバンナムの対応を、アイマス関連企業の日本コロムビアと比較して記してゆこうと思います
●0-2:「危機広報」とはなにか
近年頻発する企業不祥事や、突発的な風評被害。その時企業はどう広報し対応すべきかというリスクマネジメントの一種が「危機広報」です。「クライシスコミュニケーション」とも呼ばれます
危機広報の目的は「情報開示によって消費者・市場の不安感を解消させることで、発生したクライシスによるダメージを最小化し、企業の顧客、社員、関連スタッフ、株主、評判、ブランド、ビジネス、環境を守る」こと。平たく言えば「火消しの技術」です
突発的な不祥事・不具合・風評被害の発生は、企業が長年かけて築きあげてきた製品ブランド・企業ブランドの失墜の危機(クライシス)。クライシスを防ぐために消費者や市場へどう対応するか。それが危機広報。適切な対応をとれば、企業の信用の失墜を防ぎ、かえって信用を高めることもあります。しかし対応に失敗すれば消費者や市場の信頼を失い、不祥事の製品のみならず企業全体のブランドが失墜することとなります
リスクマネジメントでは一般に、以下のようなことが危機広報で大切とよく指摘されます
1:素早い初動
対応が遅れれば、それだけ企業ブランドへの傷は広がります。また、あまりに初動が遅いと、「この企業には問題を解決する姿勢が見られない」ととられ、消費者や市場の信頼を失います。
2:楽観にすがらない
「事故を起こした部門からの報告によれば、トラブルはすぐに収まりそうだ」「消費者や市場が騒いでいるが、放っておけばそのうち騒ぎも沈静化するだろう」等楽観にすがっては、クライシスがますます拡大したときに手が打てなくなります。常に最悪の事態を想定したうえで、それを防ぐために動くことが大切です
3:情報を隠さない
企業に都合の悪い情報を隠すことは不可能。インターネットによる内部告発も珍しくない昨今、「情報隠し」が明らかになったとき、企業ブランドには深い傷がつきます「隠す・うそをつく・もみ消す・ほとぼりがさめるまで逃げる」は危機広報では最も避けねばなりません
4:消費者や市場が抱いている不安を解消させるように動く
「消費者や市場は、今なにを不満に・不安に思っているのか」を相手の立場になって考えることで、内実の伴った対応を行うことが必要です。これをおろそかにし、企業内の視点しか持てず、やみくもに自社や同僚を守ることを優先することは危機広報の失敗につながります
5:社員全体で当事者意識を持つ
担当や部署が異なっても、消費者や市場は「会社の一員=会社そのもの」という目を持ちます。社員全員が当事者意識を持ち、どのように応対するか統一見解を打ち合わせておくことが大切です。人によって発言がバラバラでは、企業全体の信用が下がってしまいます
6:率先して問題を解決しようという強い姿勢を見せる
消費者や市場は、企業がクライシスの原因を把握しているか。解決するためにどういう手段を取るのかに注目しています。「この企業に解決能力はない」「解決しようとする意思が見られない」と思われたら、すぐに企業全体の不信に直結します
7:クライシスへの対応では、対応と広報とを並行して行ってゆく必要がある
危機広報は、クライシス解決への企業の意欲・姿勢をアピールすることでもあります。企業内部でどれだけ解決への対応・努力をしていても、その姿勢と対応状況とを積極的にアピールしなければ、結局消費者にはわかってもらえず、不信や不安を解消することはできません
8:明確な方針と戦略が大切
危機広報は、最終的にどういう形の解決を目指すのかの方針を決め、それに応じたメッセージを発信してゆくのが大切です。情報公開が大切とはいえ、単なる情報の垂れ流しは事態の混乱を招きます。途中でトーンを変えると「発言が二転三転した」と取られ、かえって信頼を失います。終始一貫、予め定めた方針を堅持し、ぶれない軸を持って解決に向けてゆく姿勢をアピールすることで、消費者の不安を抑え、信用回復につながります
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不二家、赤福、パロマ、雪印乳業等、危機広報の事例は近年ますます増えていますが、
今回の2騒動がそれらの例と違う点は、「発売前の仕様発表段階で批判を受けた」という点です。
商品の発売前のため、金銭的身体的損害を被った被害者は存在していません。前掲企業の事例と異なり、法的責任も道義的責任もありません。しかし、これを放置すれば売上や会社・ブランド価値に影響を及ぼすのは確実。そういう事例
このような事例は、取り上げられることは少ないのですが、ゲームやビデオ、出版等娯楽コンテンツ制作の企業にとっては、わりかしよくある事例でもあります。
娯楽コンテンツは、法的責任や道義的責任が問われることは他業種に比べすくないですが、生活必需品ではない分だけ、ユーザーとの信頼関係がより重要になってきます
今回取り上げるバンナムと日本コロムビアの事例も、共にそのような事例ですので、危機広報とリスク管理に興味を持つ、とりわけ娯楽コンテンツ関連の方々への一助となれば幸いです
(続く)
記事内のデータ等は、ツイート当時のものとなっております
当騒動の概説を以下にまとめておりますので、本記事をお読みになる際はご参考ください
◎「アイドルマスター2」騒動概説
http://mayayajujitsu.blog108.fc2.com/blog-entry-265.html
◎0:はじめに
●0-1:続く「ユーザーが抱く不信感」
2月24日に発売された、XBox360版アイドルマスター2。売り上げをみますと、初週:メディアクリエイト調べで34621本(http://www.4gamer.net/games/117/G011794/20110302065/)ファミ通調べで4万0422本(http://geimin.net/da/db/2011_ne_fa/mo.php?sort=ruikei2+11)
また、ファミ通調べでは、6/26現在で通算売上5万4600本(http://ameblo.jp/gameryou/entry-10953424920.html)
今年発売のXBOX360ソフトの中では最も多い売上です。しかし、廉価版含めて9万本売り上げた(このサイトによれば2009年2月現在で9.9万本。http://ameblo.jp/sinobi/entry-10208590757.html)
2007年01月:Xbox360「アイドルマスター」4.9万本
2007年11月:Xbox360「廉価版・アイドルマスター」5万本
2008年02月:Xbox360「アイドルマスター ライブフォーユー!」7.5万本)
前作1と比較すると、十分に売り上げたとはいえない結果です
また、2との連動アルバムCD「MASTER ARTIST 2」の売上も、平均7000枚台を推移しています(http://imasnews765.blog9.fc2.com/blog-entry-356.html。オリコンランキング情報サービス「you大樹」からのデータのようです。参考:http://d.hatena.ne.jp/kasuyarou/20101214/1292340426)
これは(ベストアルバム等を除いて)最大の売上を出したシリーズ「MASTER SPECIAL」の平均12000枚台を大きく下回り、2009年に発売された外伝シリーズ「DREAM SYMPHONY」の平均9000枚台も下回る売上枚数です
私は2未プレイなので、シナリオやゲームシステム、キャラクター設定等の評論はここでは行いません。しかし、上記売上だけで見る限り、2展開は成功しているとはいいがたい状況です
3月のツイートで私は「2騒動の本質は、ユーザーがバンナムに抱いた不信感」と書きました。現在の2展開の不信は、バンナムが今でもこの「ユーザーの不信感」を解消できていないことが大きな原因と考えています。そしてそれがCDやアニメをはじめとした関連企業の足も引っ張っている状況。
なぜバンナムはユーザーの不信感を解消できなかったのか?不信感を解消るためにはどうすればいいのか?
今回はリスクマネジメントと「危機広報」の面から、2騒動をめぐるバンナムの対応を、アイマス関連企業の日本コロムビアと比較して記してゆこうと思います
●0-2:「危機広報」とはなにか
近年頻発する企業不祥事や、突発的な風評被害。その時企業はどう広報し対応すべきかというリスクマネジメントの一種が「危機広報」です。「クライシスコミュニケーション」とも呼ばれます
危機広報の目的は「情報開示によって消費者・市場の不安感を解消させることで、発生したクライシスによるダメージを最小化し、企業の顧客、社員、関連スタッフ、株主、評判、ブランド、ビジネス、環境を守る」こと。平たく言えば「火消しの技術」です
突発的な不祥事・不具合・風評被害の発生は、企業が長年かけて築きあげてきた製品ブランド・企業ブランドの失墜の危機(クライシス)。クライシスを防ぐために消費者や市場へどう対応するか。それが危機広報。適切な対応をとれば、企業の信用の失墜を防ぎ、かえって信用を高めることもあります。しかし対応に失敗すれば消費者や市場の信頼を失い、不祥事の製品のみならず企業全体のブランドが失墜することとなります
リスクマネジメントでは一般に、以下のようなことが危機広報で大切とよく指摘されます
1:素早い初動
対応が遅れれば、それだけ企業ブランドへの傷は広がります。また、あまりに初動が遅いと、「この企業には問題を解決する姿勢が見られない」ととられ、消費者や市場の信頼を失います。
2:楽観にすがらない
「事故を起こした部門からの報告によれば、トラブルはすぐに収まりそうだ」「消費者や市場が騒いでいるが、放っておけばそのうち騒ぎも沈静化するだろう」等楽観にすがっては、クライシスがますます拡大したときに手が打てなくなります。常に最悪の事態を想定したうえで、それを防ぐために動くことが大切です
3:情報を隠さない
企業に都合の悪い情報を隠すことは不可能。インターネットによる内部告発も珍しくない昨今、「情報隠し」が明らかになったとき、企業ブランドには深い傷がつきます「隠す・うそをつく・もみ消す・ほとぼりがさめるまで逃げる」は危機広報では最も避けねばなりません
4:消費者や市場が抱いている不安を解消させるように動く
「消費者や市場は、今なにを不満に・不安に思っているのか」を相手の立場になって考えることで、内実の伴った対応を行うことが必要です。これをおろそかにし、企業内の視点しか持てず、やみくもに自社や同僚を守ることを優先することは危機広報の失敗につながります
5:社員全体で当事者意識を持つ
担当や部署が異なっても、消費者や市場は「会社の一員=会社そのもの」という目を持ちます。社員全員が当事者意識を持ち、どのように応対するか統一見解を打ち合わせておくことが大切です。人によって発言がバラバラでは、企業全体の信用が下がってしまいます
6:率先して問題を解決しようという強い姿勢を見せる
消費者や市場は、企業がクライシスの原因を把握しているか。解決するためにどういう手段を取るのかに注目しています。「この企業に解決能力はない」「解決しようとする意思が見られない」と思われたら、すぐに企業全体の不信に直結します
7:クライシスへの対応では、対応と広報とを並行して行ってゆく必要がある
危機広報は、クライシス解決への企業の意欲・姿勢をアピールすることでもあります。企業内部でどれだけ解決への対応・努力をしていても、その姿勢と対応状況とを積極的にアピールしなければ、結局消費者にはわかってもらえず、不信や不安を解消することはできません
8:明確な方針と戦略が大切
危機広報は、最終的にどういう形の解決を目指すのかの方針を決め、それに応じたメッセージを発信してゆくのが大切です。情報公開が大切とはいえ、単なる情報の垂れ流しは事態の混乱を招きます。途中でトーンを変えると「発言が二転三転した」と取られ、かえって信頼を失います。終始一貫、予め定めた方針を堅持し、ぶれない軸を持って解決に向けてゆく姿勢をアピールすることで、消費者の不安を抑え、信用回復につながります
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不二家、赤福、パロマ、雪印乳業等、危機広報の事例は近年ますます増えていますが、
今回の2騒動がそれらの例と違う点は、「発売前の仕様発表段階で批判を受けた」という点です。
商品の発売前のため、金銭的身体的損害を被った被害者は存在していません。前掲企業の事例と異なり、法的責任も道義的責任もありません。しかし、これを放置すれば売上や会社・ブランド価値に影響を及ぼすのは確実。そういう事例
このような事例は、取り上げられることは少ないのですが、ゲームやビデオ、出版等娯楽コンテンツ制作の企業にとっては、わりかしよくある事例でもあります。
娯楽コンテンツは、法的責任や道義的責任が問われることは他業種に比べすくないですが、生活必需品ではない分だけ、ユーザーとの信頼関係がより重要になってきます
今回取り上げるバンナムと日本コロムビアの事例も、共にそのような事例ですので、危機広報とリスク管理に興味を持つ、とりわけ娯楽コンテンツ関連の方々への一助となれば幸いです
(続く)
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